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回りの人間が次々に倒れる中で、俺も軽い目眩に襲われていた
体から力が抜けてその場に倒れ込む
この甘い薫りには覚えがある
すぐに気付かなかった自分に悪態を吐きたくなったが、今はそんなことをしてる場合じゃない
龍「………っ、…青…」
俺は刀に宿る相棒を呼んだ
俺の声に反応するように刀が淡く光る
青『龍、これ何?』
青の声が直接頭に響いて来た
龍「幻華蝶…、催眠……作用の……ある………鱗…粉……」
青『…了解』
青の声と共に体を巡る毒が少しずつ薄れていくのが分かる
水を司る青龍の力が血の流れによって全身に巡る毒を浄化していく
だけど、未だ途切れそうになる意識に抗いつつ、俺はやっとの思いで唯一この場に立っている二人へ視線を向けた
こちらに背を向け、白銀の髪を風に靡かせている白夜と、フードを目深に被った女へ
女「私の目的は至って簡単。金の瞳を持つあなたならすぐに分かるわよね?」
白夜「やっぱり俺か…」
楽しそうに笑う女に対し白夜はどんどん無表情になっていく
女「ふふふ、それを手に入れると莫大な富が得られると言われている金の瞳。何億万人に一人しか持たないとされるそれ」
女は楽しそうに笑うと白夜の顔にゆっくり手を伸ばす
その指先がつーっと白夜の目尻を撫でた
女「抵抗しないでね、今まで色んな人間に狙われつつ生き延びた賢いあなたなら分かるだろうけど、この船には私の仲間、幻華蝶の毒を無効にする力をもった人間がいる」
女の持つ袋が揺れた
甘い薫りが強くなる
女「彼らはこの薫りの中でも自由に動ける。つまり、あなたの大切なお友達を何時でもあの世に送ってあげられる」
白夜の目尻を撫でていた指に力が籠る
女「あなたの瞳をくれるなら、彼らは何気なかった様に目覚めることができるわ、さぁ、その瞳を頂戴?」
パンッ
力の籠る女の手が渇いた音を立ててはたかれた
女「……!?」
白夜「…………」
無表情だった白夜が不意に口許を歪める
白夜「…………鏡」
白夜がニッコリ笑って言葉を発した直後、その隣に数人の男達が何もない空間から降って来た
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