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空夜の目の前で化け物は口の端をつり上げ笑い、腕を大きく振り上げ勢いよく空夜へと振り下ろそうと一瞬にして風を切る。
地面には赤く染まった腕が転がる、それは人間の腕にはとても見えないあの化け物の物だった。
「ギャァァァァ!」
苦痛に満ちた化け物の悲鳴。
空夜は唖然とする、目をつむる事なく眺めていたその光景は、振り下ろされる腕が、飛んできた一本の細い刀に切り落とされる様子。
血を浴びた刀身が空夜の姿を映す、『勝てる』殺意がフツフツと沸き上がる、一度も真剣を見たことも扱った事も無い、もちろん生き物に振り下ろしたことも。
だが、空夜には殺す以外の選択が浮かばなかった。
刀の塚を握り地面から拾い上げる。
刀に付いた血が刀に溶けこんでいくように見えたが、怒り狂い、襲いかかってくる化け物を視野に入れた空夜は、それを気にすることなく刀を構え化け物へと、とびかかった。
その光景を木の上から眺めていた小さな影が小さく笑った。
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