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構えた刀が『ギラリ』と、鈍く光る。
まるで、刀でさえも空夜と、共に前に立つ少女を威嚇するように。
刀を向けられている少女は構えることもなく、空夜に背を向け少し右奥にある、岩までゆっくりとした足取りで進んだ。
沈み始めた夕日は、二人の影を遠くまで伸ばしていく。
空夜の影は、動くことなく離れていく少女に刀を構え続けていた。
「ねぇ?」
岩までたどり着き、上に登り座り込んだ少女は膝に肘をあて、腕に頭を預けながら空夜に聞こえるよう、大きな声で呼んだ。
動かずにただ睨みつける空夜を見ながら少女は不適な笑みをもらし口を開けた。
言葉は風に運ばれるよう、空夜の耳に優しい声色で届いた。
「変だとは思わないの?その刀」
一緒空夜は怯んだが、一度強く少女を睨みつけてから刀をじっと見た。
夕日に照らされ刀は怪しくも美しい色を空夜に見せてみせた。
真剣を見たことの無い空夜にさえ、解るほどにその刀は滅多に無い素晴らしい刀の様だった。
そこまで、考えて空夜はひらめいたように、顔を上げ少女の方へ刀をつき出す。
「別に盗んだりする気は無いよ!しっかり返す。」
きっと、高価な刀なのだろうと、空夜は心の中で付け加える。
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