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春皆が新しい生活に向けて色々な準備を始めた頃。
高校2年生になろうとする、秋原空夜‐アキハラクウヤ‐は庭に蝶が舞うのを、縁側であぐらをかき、先ほどまで剣道の練習に使っていた竹刀にアゴをあづけ呆然と眺めていた。
恋人がいるわけでも、目指す大学が有るわけでも、バイトをしているわけでも無い空夜には、剣道意外にやりこめる事はなかった。
「暇だ・・・」思わず小さく不満をもらし、今日何をしようかと考えてみたがやはり何も思い付かず溜め息を一つこぼす。
「空夜♪」
ウキウキとした様子で、髪を短く切り剣道着を着た小柄の少年は隙だらけの空夜の背中に倒れるようにして抱きついた。
「秋彦・・・男に抱きつかれても全然嬉しくないんだけど?」
肩を掴む秋彦の手を空夜は二三度軽く叩きながら、目線を庭に向けたまま言うが秋彦は手を離さず先ほどよりも更に密着する。
「なぁ、お願いがあんだけど?♪」
ウキウキとした秋彦とは裏腹に空夜は少し疲れた表情を見せ秋彦を見る。
「その頼みを承諾するまでどうせお前は手を離さないんだろ?」
空夜の答えに秋彦は悪戯っぽく笑い大きく一度うなずいた。
「一緒に服屋行こうや?」手をようやく離し、明日彼女とデートなのだと付け加える。
空夜は溜め息と同時に頷くと「どうせ、俺は着飾っても喜んでくれる子はいねぇよ・・・」と、呟く。
そんな空夜の背中を強く叩き笑いながら秋彦は「空夜ならすぐに出来るさ」と、楽しそうにする。
今日の空夜の予定が出来た。
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