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喉のかわきも収まり、落ちついた空夜は自分以外の変化にも気付いた。
辺りに生える草花は今までに見たこともないような物ばかりで時々姿を見せる動物もやはり同じく見たこともない者ばかりだった。
不安を覚えた空夜は唯一自分の持ち物だった武器にもなるであろう竹刀と親に秘密でためたおこづかいで買った木刀を探そうとと辺りを見渡し腰を上げた。
「おぃ、見ろよ人間だ」
「女だ、美味しそうだな」
聞こえた言葉に空夜は氷ついたように動かなくなった。
『人間』『美味しそう』
人間がいても、不思議ではないはず、次に聞こえた言葉は空夜を更に不安にさせた。
『女だから美味しそうなのか?』
声のした方へゆっくりと目を向け空夜の不安は確信を持った。
こちらを見る二つの影は、鋭くとがった爪と牙。
ひじの先から外に向かい飛び出した刀のように細く鋭そうな白い何か。
鬼のような恐ろしい形相に血のように赤く獲物を狙うようなギラギラとした目。赤っ色の肌。
二つの影が一歩空夜の方へ足を進める。
冷たい汗が空夜の頬を流れる、いつの間にか動物達も姿を隠し声は全く聞こえてはこなかった。
静まる森の中近ずく足音空夜にはやけに大きく聞こえた。
血が一点にあつまり、心音が耳の中に響く。
『逃げろ‼』本能が空夜にそう告げた。
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