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そして願う事は
あの時はよくわからなかった彼の言葉。
今更だけどその意図がわかった気がした。
なんてわかりにくい優しさだったんだろう。
そのわかりにくい優しさはまるで彼自身を表してるみたいだと小さく笑った。
彼はとても頭がいいからきっといつまでたっても俺を忘れないでいてくれるだろう。
頭がいい優しい彼の事だからいつまでも俺がいなくなった事を自分の責任だと攻め続けるだろう。
優しくて器用なくせに肝心なところで不器用なやつだから自分が辛いと気付かずにずっと覚えてるだろう。
泣くこともわからずにただ(自分でも気付いてないだろうけど悲しそうに)笑いながら耐えていくのだろう。
…そして俺は彼の中で生き続ける。
(いまさら、気付いたって遅い、けど)
「もっと早く気付けたらありがとうっていえたのにな」
『どうかしたのか、ルーク』
響く声になんでもないと呟く。
「なぁ…俺、もう消えるんだよな…」
しばらくした後そうだとローレライはいった。
『ルーク、なにか願いはないか?』
体(器)がないからこの世に生きることは無理だが、と言葉を切る。
ローレライが消える俺を思ってくれているんだとわかりありがとうと伝え笑った。
もし叶うなら
「…なんでもいいのか?」
あぁと頭に響く声がいう。
静かに目を閉じる。
もし彼がこの願いを聞いていたならばきっとバカだと怒るだろうもしかしたら呆れるかもしれない。
なんだかその姿が想像できて笑みを漏らした。
「俺さ、皆と旅できて本当よかったと思ってるんだ。」
俺の独り言のような呟きにローレライは黙って答える。
それに心の中で感謝する。
「…だから俺のせいで悲しんだり、自分を責めつづけたりして、ほしくないんだよな」
悲しんでくれるのは嬉しいんだけどなと笑う。
「だからさ、 してほしいんだ」
『…本当にそれでいいのか』
後悔はしないのかとローレライは問う。
きっと、たぶん、俺は後悔する。(だってつらすぎるから)
でもそれでも…
あぁと頷くとローレライは悲しそうな声で了解したとつぶやいた。
心の中でごめんと呟く。
誰に対しての謝罪なのかはわからないけど(俺はただただごめんと何度も繰り返した)
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