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祈りに似た願いがもたらした歪み
今日も飽きることなくレプリカの研究。
本当はまだ続けられたのだがそろそろお休め、お前の部下達も心配してるぞと幼なじみであるこの国の王から通達をうけて少しだけ休む事にした。
(きっと休まず続ける研究に部下達が陛下へ死霊使いに休むように進めてくださいとでもいったのだろう)
空を見上げるといつの間にか抜けるような青が広がっていた。
何も考えずにただ空を見ていると綺麗だなという声が隣からした気がした。
どこか懐かしい声だと思う。
目を向けるとそこには誰もいないのに。
よく思い返すとその声も聞いた事がないような声だった気がする。
(だってそんな悲しそうな楽しそうな声は聞いたことがない)
幻聴だろうか
幻聴を聞くとは自分はたしかに疲れているのかもしれない。
少し仮眠をとろうと自分に与えられた部屋のドアをあける。
自分の部屋で寝るのは久々だ。
窓を開ける。
新鮮な空気が入ってきた。
机の上で山になっている本がペラペラとめくれた。
なんとはなしに目を向ける。
ある箇所がマークされている事に気がついた。
『人は誰の記憶に残らなくなった時に死ぬ』
たしかにこれは自分の字だ。
しかし本当に自分がマークしたのだろうか。
人よりよっぽど記憶力があると自負しているが全く記憶にない。
しばらくそのページを見つめる。
なにか大切な事だったような気がする。
しかし
「なにも…覚えてません」
静かに呟きページを閉じる。
早く寝てまたレプリカの研究をしなくては
そういえば自分は何故こんなにもこの研究に執着しているのだろうか。
誓ったからだったと答えを出す。
誓った?
誰に?
頭を振る。
ダメだ全く覚えていない。
(空を綺麗だよなと誰がいったのだろうか。とても大切な事だった気がするのに。)
大切だったはずのものがそこにある気がして手を伸ばす。
そこには何もなくただむなしく手は空を切った。
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