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そんなある日の事である。休養中の陸抗は、いつものように寝所にて書物を読んでいた。
「閣下、失礼します」
「虞英か、入れ」
陸抗は表情を緊張させて、部将の虞英を招き入れた。
休養中、もしもの事があれば必ず知らせに来るように言っていたため、また晋軍の来襲でもあったのかと思ったのである。
「閣下、おかげんはいかがですか」
「大丈夫だ。前置きはいらぬ。何かあったのか」
「はっ、それが…」
果断をもって知られる虞英は、その評判に合わずに言い淀んだ。
陸抗はいよいよ怪しんだ。
「どうした」
「は、はい。それが、晋軍から使者が参ったのですが…」
「戦書でも送りつけて来たか」
「いえ、実は…羊将軍の親書を所持してきたのです」
「羊公の…?」
陸抗は訝しげな表情をした。
まさか、この情勢下で投降してくるとも思えない。
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