3/9
前へ
/54ページ
次へ
そんなある日の事である。休養中の陸抗は、いつものように寝所にて書物を読んでいた。 「閣下、失礼します」 「虞英か、入れ」 陸抗は表情を緊張させて、部将の虞英を招き入れた。 休養中、もしもの事があれば必ず知らせに来るように言っていたため、また晋軍の来襲でもあったのかと思ったのである。 「閣下、おかげんはいかがですか」 「大丈夫だ。前置きはいらぬ。何かあったのか」 「はっ、それが…」 果断をもって知られる虞英は、その評判に合わずに言い淀んだ。 陸抗はいよいよ怪しんだ。 「どうした」 「は、はい。それが、晋軍から使者が参ったのですが…」 「戦書でも送りつけて来たか」 「いえ、実は…羊将軍の親書を所持してきたのです」 「羊公の…?」 陸抗は訝しげな表情をした。 まさか、この情勢下で投降してくるとも思えない。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

505人が本棚に入れています
本棚に追加