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「どういう事だ」 「実は…羊将軍は、情報を得て閣下が体調を崩したのを知り、その…薬を閣下に差し上げたいと記してありまして、使者もこれなる箱を持ってきた次第にございます」 「薬…」 陸抗は虞英が差し出した木箱をまじまじと見た。 「閣下、わたしが申し上げるまでもありませんが、毒ということも考えられます。どうかくれぐれもお飲みにはなりませんように」 「…虞英よ」 「はっ…」 虞英は顔を上げて陸抗を見ると、彼は意外にも微笑んでいた。 「…なるほど。かの諸葛孔明も、司馬仲達に書物を送り、対話を重ねていたという。人は、己を知るものを求めるものなのだ」 「はぁ…」 「羊公は晋軍きっての名将であるが、毒を使うような卑劣な手は使わぬ。…なるほどな。わしもこの年になり、ようやく悟ったようだ」 陸抗はそう言うと、納得したように何度も頷いた。
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