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遺族の憤怒と憎悪の視線のなか、彼は刑吏に連れられ絞首台へと歩いた。
そして天井から垂れ下がる先を丸く結ばれた縄の前に立たされた。
彼は無関心そうに縄を見ると、対面する遺族たちを見渡した。
遺族のなかには、その視線を浴びることを嫌がり顔をそむける者もいた。
また憎しみに満ちた目で呪詛の念を送らんとするがごとき者もいた。
やがて刑の執行のための準備が整うと、刑吏が死刑囚と最後に話す機会が訪れた。
「なにか言い残すことはないか?」
両手を拘束され、首に縄をかけられた彼は低くつぶやいた。
後悔している、と。
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