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「仁…俺ね。昔から、仁とは親友だと思ってた。
ずっと一緒だって信じてた。
でもね、仁が俺より他の誰かを優先してたり、他の誰かと親しくしてるの見てたら…なんか、胸がチクチクして…
相手は仁だよ?それはありえないって言い聞かせてた。でも、」
かめはそこまで言うとうつむいた。
俺はかめからの言葉を、ゆっくり待った。
「でもね、仁に一緒にかえるのやめようって言われた日から、俺の中の色んなものが崩れていった。
すごくつらい、と思った。
でもそれってなんでだろうって思った。それまでは絶対ありえない、親友だし、って言い聞かせてきた部分もあったと思う。けど、やっぱり気付いちゃったんだよね。
俺は、仁が好きなんだって。」
かめも、俺と同じ頃から…。
お互いが想いあっていたのに、それを伝える勇気も度胸も、お互いがまだ持ち合わせていなかった。
…子供だった。
「仁に嫌われたと思ってたから、あれからずっと、仁のことは忘れようって思って仕事に打ち込んできたのに…」
今そんなこと言われたら…今までの俺の努力、全部無駄じゃん…。」
俺の子どもみたいな考えが、亀を傷つけて苦しめて。
…全然、守れてなかった。
「…ごめんな、かめ」
「なんで仁が謝るんだよ。謝るのはちげぇだろ。
俺は…感謝してる。
全部、俺のためだったんだろ?ありがとう。」
…ありがとう、なんて。
言われるとは思ってなかった。
俺の気持ちを受け止めてくれて、亀自身の気持ちも話してくれて。
ありがとう、と言いたいのは俺のほうなのに。
「すごい、遠回りしたな、俺ら(笑)」
うん、遠回りだった。
でもその遠回りした分の時間は、俺たちには必要だった。
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