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 「ともかく、本当の名前を教えてよ。何て呼んでいいか分からない相手とは話しにくいよ」  「――名前、ね。それは生きてる者だけに許されてる記号よ。私のような存在に固有の名前なんて無いわ。ただ、背後霊とか守護霊と呼ばれるだけ。だから名前のある君が羨ましいゾ、翼君」  そう言って、僕の背後霊は目を逸らした。  何か、触れてはいけない物に触れた気分。  そうか。だから今まで名前をあやふやにしていたのか。  気付くの遅いな、僕。これじゃあ、女の子にモテないわけだ。  「じゃあ名前を付けて上げるよ。うんとカワイイのを」  「それは――、魔界の掟の第1059条に抵触するわ。でもありがとね、翼君」  そう言って頭を下げた。  頭を下げられた。  素直なとこあるな。ちゃんとアリガトウが言えるんだ。  でも、霊界じゃなく、魔界なんだ......ちょっと複雑  「僕が勝手に呼ぶのは構わないだろ。そうだなー、シータなんてどう? 浮いてるし可愛いし」  「嫌よ。私にはテンコーって素敵な名前があるもの」  「は??」  「君の反応を探っただけよ。君の名前が翼だと知った以上、翼を折ってやると心に決めたの。と、言う台詞を言いたいが為の壮大な前フリよwww」  「たった今、ボクの心の中の森が、また一つ腐海に沈んだよ!!」  「意味不明な事言わないでよ。君と話す時は、マスクしてないと、5分で脳が腐りそうね」  「いや、脳じゃなく肺だソコ! って、十二分に通じてるじゃねえか!」  知的とは言えないけど、僕にとっては素敵な会話だった。
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