①19:30、飲み会

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「ん、何ですか?」 綾菜ちゃんはちょっと小首を傾げて尋ねてきた。 いちいちこういう仕草もかわいい。 そしていちいちあたしの心臓はご丁寧にドキンと反応する。  「いや~……、綾菜ちゃん演技うまいなと思って。可愛いし、女優になれるんじゃない?」 あたしは冗談まじりに綾菜ちゃんに向かって言った。 「そうですか? じゃあなっちゃおうかな~」 綾菜ちゃんも笑いながら冗談で返してきた。 でも、すぐその後「あ、やっぱなれないや」と訂正した。 「なんで?」 「だって……、仕事場で香奈さんに会えなくなっちゃうもん」 少し顔を俯けて恥ずかしそうに呟いた。 「それに……」 綾菜ちゃんはそう言うとあたしの目を見つめた。 「自分の本当の気持ちを隠してまで演技できませんから」 ――『本当の気持ち』 ――『あたしへの気持ち』 まったく綾菜ちゃんはずるいんだよ。 今日の飲み会で抱き締めたことやトイレのキスのこと注意しようと思ったのに、   そんなこと言われたら注意できないじゃないか。 ――でも、あたしは 綾菜ちゃんの顔を見つめながら、 この小悪魔に振り回されてみるのもいいかもしれないと思ってしまった。 ~~~~~~~~~~~~~~~
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