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時間は午後8時を回ろうとしている頃だった。
先程からキッチンから空腹のお腹をさらに刺激するようないい香りが漂ってくる。
綾菜ちゃんがあたしの誕生日のために腕を奮っていてくれているのだった。
誕生日は明日であったが、明日の夜には綾菜ちゃんが帰ってしまうので今日料理を作ってくれてるわけである。
ところであたしの方はというと、綾菜ちゃんからの「香奈さんはそこで座っていてください」という一言により、机の前でじっと待っている次第であった。
――それにしても『香奈さん』とは……
思わず呼ばれる度にニヤニヤしてしまう!
香奈なんて呼ぶのは会社では同期の早紀と南ぐらいしかいないからな。
「香奈」って名前で呼ばれることはあたしたちの関係が一歩進んだということを表しているようでうれしかった。
そうやって想いを馳せてニヤニヤしている時にキッチンから綾菜ちゃんの声が聞こえた。
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