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「……ちょっ! 何言ってんの! ダメだよ!」
あたしは予想外、いや、予想どおりの展開が予想外すぎて焦ってその『ご褒美』を却下する。
そうすると先ほど笑顔だった綾菜ちゃんの表情が見る見る曇っていき、ついにむくれてしまった。
「……なんでですか? 私とキスするの嫌ですか?」
「そうじゃなくて! キスはしたい……けど、ここではダメだよ! 誰かきたらまずいでしょ!」
あたしはそう言ってトイレのドアの方に視線を送る。
「……わかりました。じゃあ他の人にするので大丈夫です」
綾菜ちゃんはあたしから目をそむけながら、とんでもないことを言い出した。
「……~~!! ……わかったから……。じゃあここではまずいからトイレの個室でね……?」
あたしは観念して『ご褒美』をあげることにした。
そしたら綾菜ちゃんはすぐに笑顔に戻って嬉しそうに「はい!」と返事をした。
――うぅ、先輩の威厳が……!
どうやらあたしは好きな人にはとことん甘いらしい。
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