彼女が彼女になった理由。

①19:30、飲み会

あたしは何事かと思い、トイレの便座の方を振り返った。

後ろでは綾菜ちゃんがこちらをじっと見つめている。

右手は水を流すレバーに、　
表情は微笑みは浮かべず冷静で。

「あ、綾菜ちゃん……？」

あたしは綾菜ちゃんのその表情にただ事ではない雰囲気を察知して、声が外に漏れないように静かに呼び掛けた。

しかし綾菜ちゃんはあたしの呼び掛けには応じず、ゆっくりとこちらに近づいてくる。　

あたしは金縛りにあったかのようにその場から動けなかった。

そして綾菜ちゃんはあたしの目の前に立つと、両手をあたしの首に回し、グイッとあたしの顔を自分の顔の方に引き寄せた。