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教室に入るなり香奈が溜息をついた。
「どうしたの」とあたしは香奈に尋ねるとすぐにその理由を話しはじめた。
「あのさ~……、あたしの名前って青山香奈じゃん?」
「何、それがどうかしたの……って、そうか!」
あたしはそこまで言われて気付いた。
たいてい最初の頃の席順は名簿順になっているものである。
つまり「あおやまかな」という名前ならば、ほとんどの場合が一番端の一番前になる。
――うわ~、悲惨だわ。 一番前なんてみんなが避けて通りたいポイントよね。
「香奈……、ご愁傷さまです」
あたしは残念そうな表情をつくって、いつも前の席に座るはめになる香奈のご冥福をお祈りした。
「うわ! 超他人事じゃん!」
香奈はあたしに冷たい視線を向けてきた。
「え~、だって他人事だしぃ?」
あたしはそんな香奈の冷たい視線を気にすることなく、香奈をからかう。
「もうっ!」と拗ねてしまった香奈は可愛くて、からかいがいがありそうだと、あたしは心の中でにんまりした。
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