-真実と空想の食い違い-

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-真実と空想の食い違い-

チチチ… たぶん一匹しか周りに居ないのだろう。一つの鳴き声だけがこだましている。 今は明け方。 季節は巡りめぐって冬。空気は澄んでいて、気持ちがよい。とても静かに日が上り始めてきた。 太陽がすぅ―…っと差し込み、冷たい夜を切り裂いてゆく。 誰も居ないのかとても静かだ。誰にも相手にされない太陽は勝手にのぼり、勝手に沈む。 まだ海の中にいたほうが騒がしいだろう…というくらいだ。 カサ―… ササァ… 風が吹くと、落ちていた紙が地面を駆ける。 誰も拾わない。 ほったらかしだ。 無音の状態は数分続くとたまに風が吹く。 そしてまた無音へ。 そんなのの繰り返しだ。 《ガラガラ…サァ…ガコンッッ!》 何も聞こえない空間に突然なり出すこの騒がしさは日常茶飯事。 グラグラ揺れていた瓦礫が崩れたのだ。 たまに起きるので、そんなには気にならない。 じぃっとその場所に止まっていると数時間に1~2回。生き物が歩く音がする。 野良猫や野良犬。 今までは、きっと飼い猫・飼い犬だったのだろう。 主人をなくした彼らは、野生化していた。
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