-真実と空想の食い違い-

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グチャ―… ペチャッ… たまに聞こえるこの音の正体は容易に想像がつく。 さっき野良犬や野良猫に混じっていた人間が人間を喰らっているのだ。 キャンッ 野良犬や野良猫たちは、どうやらまだ理性のある人間たちの食料らしい。理性を無くし、野生に帰った人間は共食いをする事を選んだのだろう。 口を真っ赤に染めて歩く人間。もはや人間と呼ぶのは相応しくないのかもしれない。 己を守るためになら、なんでも出来るというのを主張するかのように歩くその人間。 彼は一人で歩いていた。きっと知人に会えなかったのだろうか―…。 それとも捨てられたのか。人間らしく生き延びる手段を失ったのか。 “珍しい”と言わんばかりの説明だが、いま彼みたいな人間は珍しくなくぎゃくに人間らしく生き延びてる方が今は珍しいのだ。
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