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ザッ…
ザッ…ザッ…
明け方の空は、凄くきれいだ。こんな状況でなければ空を楽しむ余裕もあるが今はそんなこと言えない。
遺体を踏まないように歩いていると
ガッ!!!!
時たまに、遺体に混じって生きている人も倒れ込んでいることがある。
急に足を掴まれるのだ。
「ッ……ッ…」
しかし、何を言っているのはほとんど解らない。本人は必死に伝えようとしてくる。それが異常なほど切ない。
助けようにも手遅れの人ばかりなのだ。
足を掴んでくるのは、保ってほんの数十秒。最後の力を振り絞って足を掴んできた人ばかりだ。
手が足を離れると、また歩き出した。
ザッ…
ザッ…ザッ…
こんな街だったっけか。街の形は残っているため、間違いなく新宿である。しかし、思っていたより広い。
人が行き交ってないせいだろうか。
そんな街を彷徨くこと1時間。状況はだいたい把握出来た。思っていた以上に悪い。
途中で見た親子の遺体はなんとも言えなかった。きっと母親は子供を守りたかったのだろう。子供に覆い被さって亡くなっていた。
酷いのは子供のほう。母親の横腹辺りから、顔と肩だけ出ていた。
顔や肩、腕などが鬱血している。
「こんな小さな子供に母親の体重は無理ですよ。きっと重みに耐え切れなかったのでしょう…」
山木は遺体を見てそう言った。
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