舌の根も乾かぬうちに

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大きくなったとはいえ、相手は小学生である。まだまだ私の方が力は強い。 暴れる長男を引きずりながら、裏の物置きへと向かった。 私は物置の鍵を開けると、乱雑に散らかった暗がりの中へ長男を放り込んだ。 扉を閉め、すぐに鍵も閉める。長男が扉を乱暴に叩き始めたが、勿論開けはしない。ほどなくして長男は泣き声を上げ出した。 泣き声がすすり泣きに変わる頃を見計らって、私は長男に声をかけた。 「・・誰だって一方的に嫌な事をされれば嫌な気持ちになるの。あんただってそうでしょうが」  「・・うん」 長男は殊勝な声を上げた。  「だったらゲームの横取りなんかしないで仲良く一緒に遊ぶの。分かった?」 「・・はい」  その返事を聞いて私は物置の扉を開けた。 中から長男が出てきた。まだ泣きべそをかいている。 「さあ、分かったらちゃんと謝って、喧嘩なんかしないで一緒に遊ぶのよ。じゃないとゲーム取り上げるからね」 長男は小さくうなずくと、玄関へと駆けていった。
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