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涼しい秋風が、虚しく吹いていた。未来は立入禁止の札を無視して、誰もいない学校の屋上に座っていた。
「……」
何もなく、何も聞こえない――未来だけの空間だった。太陽は頭の上に丁度昇ったところで、キラキラしている。
未来は考えていた。
梨歌は何故、あんなに苦しそうなのか。何故、何も話してくれないのか。
考えれば考えるほど、一人虚しくなるばかりであった。
未来にとって、梨歌はただ一人の無二の親友だった。だから、もっと信用して欲しかった。隠し事なんてされたくなかった。そう思うたびに心は積木のように崩れ、悲しくなるばかりだった。
「うちと梨歌はぶらんこ……なのかな」
梨歌の言葉を思い出し、そう呟いてみる。もちろん、誰も答えるはずがない。
「梨歌は……うちが何とかしないといけないんだ」
小さく、しかし力強い気持ちで呟いた。未来は次のチャイムが鳴るまで、屋上で一人ぽつんと座っていた。
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