ぶらんこ

5/5
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
しかし、女の子は黙ったまま、ひたすらぶらんこを鳴かす。未来は更に大きな声で、「あのっ!」と話掛けたが、女の子は黙ったままだった。とうとう未来は頬を膨らまし、ぶらんこに近付いて、叫ぶように言った。 「あのっ!!聞いてますか!?」 女の子が、クスッと笑ったような気がした。未来は、楽しそうにぶらんこをこぐ女の子を見て、だんだん羨ましくなってしまった。そして、ボソッと呟く。 「うちもぶらんこ乗りたい」 女の子ははっきりと、クスッと笑った。そして、なんの前振りもなく、ぶらんこから跳んだ。地面に足を着けると、初めて未来の顔を見て、無邪気な笑顔で答えた。 「いいよ」 未来は、その笑顔につられて、にこっと笑った。 その女の子は、名前を梨歌といった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!