20人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
梨歌の家は例の公園より、少しだけ離れたところにあった。未来は平然と、インターホンを押した。ピンポンの後に、とたとたと家の中から、足音が聞こえる。ガチャとドアは開いた。
「あっ……」
残念ながら梨歌ではなかった。出てきたのは、エプロン姿の梨歌のおばさんだった。
おばさんは未来を見ると、とても困った顔をした。
「あ……未来ちゃん。こんにちは」
そう小さく挨拶をしてきたおばさんに「どうも」と短く返すと、単刀直入に聞いた。
「梨歌はいますか?」
おばさんの眉が、ピクッと微かに動いたような気がする。おばさんは笑顔も作らず、引きつった顔のまま早口で言う。
「梨歌は今具合悪いから寝てる。用事それだけなら、悪いけど帰ってちょうだい」
ガチャ――。玄関の扉は冷たく閉ざされた。未来は、呆然と立ち尽くすしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!