👑テイルズＢＬ小説。

記憶 (TORサレの過去を勝手に妄想)

僕は子供の頃、天性的なぜんそくを患っていたらしく、身体が弱くて外に出られない日が多かった。
それでも、母と父と兄と。幸せに暮らしていた。

ミストはいつでも笑っていて‥あの優しく笑う顔はきっと、一生忘れない。
ダレンは、強くて優しくて。あんな風になれたらと思ってた。
スティーブは、僕をとても可愛がってくれて。そんなスティーブを、僕も大好きだった。

特別裕福でもなかったし、特別貧乏でもなかった気がする。
ただ、ラズベリーが植えられてる庭は、ミストによって綺麗に整えられていた。よくスティーブとつまみ食いして、ミストに怒られたのを思い出す。

ミストは、市販されてない果物でグミを作るのが好きだった。

だから、休日はいつも庭のラズベリーを収穫してグミを作っていたのを覚えている。

それが永遠に続くと、信じて疑わなかった。永遠なんて、そんなもの存在するはずなかったのにね。

僕が１５歳になったある日。雨の降りしきる、肌寒い日だった。それは忘れもしない忌々しい出来事の始まり。

「‥お母さーん、雨、降ってきそうだよ？」

窓からぼんやりと空を見上げていたら、雲行きが怪しくなって来ていて。

「え！？‥さっき洗濯物干したばかりなのよー！？」
「さっきまでは天気良かったのにね」
「全くだわ。んー‥、仕方ない‥洗濯物入れてくるわね」

慌ただしく走り出すミスト。

「あ、僕も手伝う」
「サレはここで待機！雨にうたれて発作おこしたら大変でしょう？」
「‥あ‥そっか‥ごめんなさい‥」
「いいのよ、そのかわり夕食の準備手伝って貰うからね♪」
「えー‥」
「文句いわなーいの！今日は二人だけなんだから」

その日、ダレンとスティーブは、バビログラードまで出ていて家には不在。
家にいたのはミストと僕だけだった。

「‥あ、降ってきちゃった‥」

外で洗濯物を取り込んでいるミストを窓から顔を出して見ていると、頬に雨が当たった。

「やっぱり僕も手伝おうかな‥」

そう思って外に向かおうとした時。ミストの背後に人影が見えた。それは村の人かと思った。
でも、手には何か光るものが握られている。危ないと本能的に悟った僕はミストにむかって叫んだ。

「お母さ‥ッ！！」
「え？」