👑テイルズＢＬ小説。

記憶 (TORサレの過去を勝手に妄想)

僕が叫んで走り出すのと、人影が何かを振り下ろすのはほぼ同時。
間に合わない、そう思った瞬間、自分の右手がかすかに光るのを見た。

「ッぁぁアァぁ！！」

それと同時に、辺り一面に悲鳴が響き渡る。何が起こったのか、全く分からない。
だけどミストのそばに走り寄ったとき、その足元を見て愕然とした。

「！」

血の海、そういっても過言じゃない。
その中に横たわっているのは、何かすら分からない。肉の塊と成り果てている。血と肉に混ざって、紫の髪がのぞいていた。

「‥サレ‥」

名前を呼ばれて振り向くと、ミストが青ざめた顔で自分を見ていた。

「お‥母さん‥‥？」
「サレ‥あなた‥フォルスが使えるのね‥？」
「フォルスって‥？‥え‥じゃあ、これをやったのは‥僕なの‥？」

目の前が、暗くなったような気がした。
正当防衛とはいえ、人を殺してしまった。

「‥サレ、良い？よく聞いて‥最近、よくこの村に来てた長髪の男の人‥覚えてる？」
「え‥あの、金髪の‥うちにも何回か来たヒト‥？」
「そう、ソイツよ」

その男のことはよく覚えていた。金髪の長髪を後ろで結った、綺麗な人。だけど、近くで見たコトも挨拶したコトもない。

そいつが来た時は、絶対に二階から降りてきてはダメだと、ミストに言われていたから。奥の部屋で、スティーブと二人でそのヒトが帰るのを待っていた。

時々、下から怒鳴り声が聞こえてきたコトもあった。
あのいつも笑っているミストが怒鳴るなんて、日常では想像すらできないのに。

「‥ごめんね、騙してたわけじゃないの‥もう少し大きくなったら、話すつもりだったの‥」
「‥お母さん？」
「サレ‥あなたは、私たちの本当の子供じゃない‥」
「‥え‥？‥じゃぁ、僕は‥え‥、そんな‥ウソ、でしょ‥？」

冗談だと思った。笑うしかなかった。