恥辱のルブ・セタ

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   「連隊、抜刀!」  十番街の目抜き通りで甲冑を着込んだ数十人の王国兵が倉庫を取り囲み突入の準備を終えたころ、雨が本格的に降り始めてきた。  この時期の雨は冷たく、長くあたるには少々つらいものがある。  連隊長のブディカンは後方で指揮を取っていて今まさに突入の号令をかけようとしたとき、それは不気味な雄叫びとともに扉をぶち破って飛び出してきた。  それは全身、血のように真っ赤で、牡牛のような角と猛獣の牙、異様に長い腕とカギ爪のついた脚をもった本物のゴブリンであった。  あまりの異様さに兵士もブディカンもじりじりと後退し始める。  「こ、これが小鬼(ゴブリン)だと?どう見ても私の倍近い身長があるぞ!」  「この装備では無理だ………隊長、砲兵隊に連絡を取りましょう!」  たじろぐ兵士たちをニラミつけるゴブリンは、今一度雄叫びをあげると猛然と前衛の兵士に襲いかかってきた。  ニメートルはあろうかという長い腕からくりだされるパンチは、盾をかまえた兵士を二、三人まとめて弾き飛ばす威力を見せる。  異様な姿と怪力に圧倒された兵士たちはもはや統率力をかき、遠巻きになって時折ちょっかいを出すのがせいぜいだった。  「前衛、ひるむな、この化け物の注意を引け!」  「ロジナ、カッツ、後ろから突け………そうだ!うまいぞ!」  
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