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かけ声とは裏腹に、逃げ腰の剣が多少切りつけたところで魔物を倒すことなどできるわけではない。
ゴブリンの隙を見て少人数が切り込み、あっという間に蹴散らされてはまた少人数で攻撃を仕掛けるの繰り返しで、離れたところから指示を出すブディカンの前には次々と石畳の路上でのたうつ人数が増えていった。
まさか、初めて見るゴブリンがこれほどまでに手強いとは正直、ブディカンは予想すらしていなかった。
彼の知っているゴブリンは伝記本にでてくる家畜を襲う悪戯もので、滅多に人前に姿さえあらわさない臆病な魔物という程度だったのだ。
それが何を血迷ったか、白昼堂々、街中に顔を出して狼藉の数々をおかしているではないか。初めて見る魔物ということもあり、知らせを聞いたブディカンは好奇心と虚栄心が相まって、くわしい話しもそこそこに連隊を率いて現場に駆けつけた。
それこそ、我こそは戯曲の中の豪傑たらんとして………。
そして見事なまでに、鼻っ柱をへし折られることになったのだ。
ここにきて、物珍しさから遠くで見物していたずぶ濡れの群衆だちも、どうやら兵隊たちでは相手にならないらしいことが解り、徐々にその場から逃げ始めていった。
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