恥辱のルブ・セタ

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   路面に叩きつけられた直後の腕の失速を狙って、ハタリの剣は流れるようにゴブリンの手の甲を切り裂いた。骨に切れ目がつく鋭さで与えられた傷の痛みは、ゴブリンをひるませるのに十分だった。  思わず攻撃を中断した敵に畳み掛けるようにしてハタリは手数の剣撃を繰り出し、腕を切り、脚を切り、指を切断した。  かつてない激痛にゴブリンは狼狽し、目の前にいる敵が強敵であることをやっと理解した………だが時すでに遅く、跳躍の姿勢をとる前に背中と両足に新たな激痛が走る。  モラレスの剣はゴブリンの背中に深々と突き刺さり、そのほか数本の剣が脚や腰を容赦なく切り裂いていた。後ろを振り返るゴブリンを嘲笑うように、モラレスの剣は魔物の回転と逆方向になめり、大量の鮮血とはらわたを路面に撒き散らす。  子牛のような悲鳴をあげたゴブリンは裂けた脇腹を押さえ付けて、その場に弱々しく膝をついた。息を荒くしたハタリがゴブリンに近づき、剣を両手でしっかりとかまえると力一杯ふりおろして断頭の儀式を終える。  路面を流れる雨水の川が赤い絨毯を作るように、小鬼の血をどこまでも引きずっていった。 .
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