恥辱のルブ・セタ

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   震える膝を必死で押さえ込みながらブディカンはハタリを凝視した。ハタリは駐屯軍、連隊長指揮官の前で改めて敬礼をすると杓子定規な自己紹介をすませ、騒動の経緯、終息の旨を確認した。  それによると昨夜から街の中心部で不気味な唸り声が聞こえるようになり、ついに日中、食糧を積んだ荷馬車が襲われるにいたったのだという。しばらくの騒動ののち腕自慢の何人かがゴブリンを倉庫に追い込んだところで戦闘が始まった次第だった。  「それは軽率としか言えませんな、ブディカン殿………いかにゴブリンといえども魔物は魔物、反撃に転じれば脅威であることは間違いないのです。もし法剣が必要な霊格であれば──」  「おぬしには街の治安をあずかる者の重責など解らんのだ、被害が拡大する前に鎮圧行動に出るのは当然のこと………臆して機を逸するなどもっての他だ!」  「されば重装兵を御用意されるべきでした」  「それが出来れば苦労はしない」  これは詭弁だった。そもそも血気にはやって魔物退治に参じたなどと責任のある立場でいえるわけはない。  「何はともあれ、この場は御引き取り願おう。一応、礼は述べておくがこれは街の治安に関する事変ゆえ、地方の領設軍隊では扱いがたいであろうしな」 .
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