恥辱のルブ・セタ

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   ちらほらと帰ってきた群衆にまぎれて一台の馬車がハタリたちに近づいてきた。二頭立てで少し大きめの車体、そして御者(ぎょしゃ)の両脇に立てられた天秤の紋章………間違いなく通商連合の馬車だった。  場違いな珍客の登場にハタリやブディカンたちが呆気にとられる中、停車した馬車の扉を開けて異様な容姿をした巨人が降りてきた。  「トプカ人とは………」  モラレスはハタリの隣でそうつぶやいた。トプカ人は独特な容貌をしているので一度見れば忘れることはない。  顔の長い犬そっくりな面構えに切れ長の目、人間同様に体毛はないが、世界でもっとも美しいとされる頭髪がこのトプカ人の場合、肩まで伸びている。その上、紺に金色の刺繍を施されたコートに隠れる細い体格は軽くニメートルを超す身長であり、いやがうえにも神秘性を高めていた。  「ブディカン殿、見たところ魔物退治は終わったように御見受けするが」  傘を手に降り立ったトプカ人は低い声でブディカンに話しかけた。  「これはシェオイ卿………何故このような危険な場所に?」  「うむ、そこなゴブリンが検分できればと思うてな………もう大事もなかろう?」 .
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