変動の兆し

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     †  森を訪れた美しい青年は今までいくつもの戦地を見てきたが、大きな戦の前には決まって豊饒な大地が拡大する事実に胸を痛めていた。  まるでこれから踏みしだかれることに反発するかのように、緑は猛り、森は種子をたくわえ、精霊たちはあらゆるものに霊力を充満させてゆく。このニーヴンの森も、みずみずしいほどのエレメントに満ち溢れているのが感じられた。  森の主として恐ろしい時間を過ごしてきたフクロウのラル・ニーヴンは、珍客を前に不安を隠せない語り口でいた。  「このところオド(気)の流れがせわしなく変化しておる……先だって小鬼のコボルトを捕まえて何か知っていないか問いただしたんじゃが、いまひとつ要領を得なんだ」  痩せ細った木の枝につかまったフクロウの話し相手をする青年は、黒いローブをはおったまま大木の切り株に腰を落として口を開いた。  「ニーヴンよ、いまや大陸のほとんどの土地でオドが乱れているのだ。それどころか、魔力の枯渇した大地にさえエレメントが満ち始めている………これは明らかに時空連続体へ外部干渉のあった証拠だ………神々さえ力の収束を決めかねているのだからな」  「三年前の皆既日食と関係があるのかもしれぬな、魔法使いよ」  
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