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剣士はマーリンを見つめたまま口元をゆがめた。
「なにが可笑しいのだ、剣士グラよ」
「なに、森のヌシというから俺はてっきり熊かドラゴンのたぐいかと思ったんだが……喋るフクロウとは笑わせる!」
「たまたま姿を借りているだけだ。そもそも主といっても、本来は実体の無い強力な地脈の精霊だ、怒らせれば山を裂き、火の川ですべてを灰にしてしまう力を持っておる」
「おお、相手にとって不足無しじゃないか!」
「お前がいうと冗談にならんから恐ろしい」
マーリンはサマルチナのフープ(輪管)を懐から取り出すと、探索呪文を唱えた。このフープは戦利品としては、なかなか重宝で、ごく簡単な探し物ならばたちどころに所在を明らかにすることができた。
二人が輪の中心に意識を集中するとボヤけた映像が輪のなかで広がり、それはしだいに群衆が練り歩く都市の雑踏であることが示された。映像はさらに焦点がしぼられてゆき、重厚な石造りの町並みから露店や馬車の間隙をぬい、いくつかの建物を素通りすると赤い装飾扉の前でぴたりと止まった。
「ここは何処だマーリン、セブロンの遺産とやらは?」
「以外と近いな、シャタの香りの強さからして、十五キロあるかないかだ………南西の方角に閃光を確認できる」
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