わん。×1

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「ああー、もう! おうちから出るんじゃなかったー! あめのばかー!」  いまだに水滴を降らし続ける暗い空に向かって声を張り上げた。  八つ当たりもいいとこである。  すると、うしろから元気な声が聞こえてきた。 「キャン!」 「?!きゃあっ」  足元から突然声がしたのであとずさろうとしたのか、足がもつれて尻餅をついた。  犬だ。薄汚れてはいるが、恐らく真っ白の。  こけた拍子にバシャリと嫌な音がして、飛びおきる。 「いやぁあ! おしりまでぬれちゃったじゃない!」  自分が回りに注意して歩いていなかったことを棚にあげ、「アンタのせいよ!」と怒鳴りつけようとした。
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