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ぴんぽんぴんぽんと。
返事を待つ間もなく連続して俺の家のインターホンが鳴り響いた。
眠りの世界へ誘われていた頭を奮い起こし、手探りで携帯を探す。見つける。掴む。引き寄せる。開く。
見えた景色は先日無理矢理友人に設定された待ち受け(何かのゲームのキャラの画像だ。うっかり変えるのを忘れてた。あとでちゃんと元に戻しておこう)
その上に浮かぶ数字は05:12。
ごじじゅうにふん。
無論午前の。
まさか訪問販売や引っ越しの挨拶がこんな時間にくるはずもあるまい。
友人が訪ねてくる予定もなかったし、アイツ等ならこの時間はどんな用事よりも睡眠を優先させるだろう。
だとしたら今も現在進行形で扉の前でインターホンを指で押している人物はただ一人に絞られる。
いったい何の用だというのだろうか。
学校に行くにはまだ余裕があるし、何より今日は日曜日だ。学校休みじゃん。
デートの約束なんてしてないし、何か行事がある日でもないし。よし決めた寝よう。
色々考えていたらまた睡魔が襲ってきたのでとりあえず俺は瞼をもう一度閉じた。
無視する事は悪い事だが人の安眠を邪魔するのもそれはそれで大罪だと思うので構うものか。
ぴんぽんぴんぽぴんぽぴんぽーん…ぴぴぴんぽーんぴんぽんぴんぽん
あー、うんまぁそうですよね。
そんな簡単に引き下がる人じゃないですよね。
仕方なしにのろのろと起きあがった俺は玄関までこれまたのろのろと移動する。
さようなら、俺の布団。俺の安眠。俺の休日。
音を立てて開いたドアの前に立っていた人物はどこかはにかむように呟いた。
「…きちゃった」
こんにちは、俺の疲労。
正直こないでほしかった、なんて口が裂けても言えないダメな彼氏(俺)は愛想笑いを浮かべて言葉を返す。
「早起きですね」
「うん。偉いだろ?」
「はい偉いです。じゃあそういう事で」
そして扉を勢い良く閉めた。
が、中途半端なところでその扉の動きは止まってしまう。
隙間から満面の笑みを浮かべた彼女の顔があった。
俺は恐る恐る目線を下にずらす。
扉と壁の隙間には、彼女の左足が挟まっていた。
自分の足を犠牲にしてまで俺の拒絶を拒否するなんてなんて末恐ろしい人なんだろうこの人は。
「やると思ったよ。
…私の足を潰す気か?開 け ろ」
未だ満面の笑みを顔に張り付けた相手が有無を言わさぬ口調で言ってきたので俺は「はい」と頷くしかなかった。
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