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久々で、浮かれすぎて、二時間も前から。
先輩の放った文章からその単語を切り抜き情報を整理する。
錆びたブランコと雑草くらいしかないこの寂れた公園に二時間も前から座り続けるなんて。
そりゃあ時間感覚も狂うだろう。
しかも俺との久々のデートで浮かれてたとかそんな理由で?
「先輩…」
俺は側頭部に未だかなりの痛みがある事も忘れ、少しだけ涙目になっている先輩の髪をもう一度優しげに撫でる。
ふわふわとした髪の毛に接触してくる俺の手の感触に彼女は少しだけくすぐったそうに目を細めた。
「そんな…何を突然恋人同士みたいな事言い出すんですか」
「いや、私達恋人同士だから」
「冗談ですよ、冗談。すみません。
だからもう泣かないでください」
ごしごしと両目を腕でこすりながら少女は「ばっ…泣いてないし」と不服そうに唇を尖らせた。
そんな相手の様子に小さく笑って、彼女の手をそっと引く。
不思議そうに先輩の瞳がこちらを見上げてきたがそんなの無視だ。
「じゃ、行きましょうか。
モスまで」
雑草をかき分けて公園から出た俺がそう笑いかければ、先輩は驚いたような嬉しいようなそして少しだけ申し訳ないような顔をし、口をつぐんだ。
とりあえず、二時間も前から俺を待つためだけにあの寂れた公園に座り続けた彼女に、少々奮発してやるのも悪くないと思った。
それに、世界三大珍味を手に入れるよりはファーストフードを奢る方が、一般の中学生には容易い事なのだ。
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