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「黒澤君、話があるんだけど・・・いいか?」
黒澤は何かこの世のものでは無い何かを見たような表情でこちらを見つめた。他人に話しかけられること自体が稀なようにさえ見えた。
「な・・・何?氷川君・・・」
「今度の修学旅行の自由行動、もう誰かと一緒に行く約束した?」
小刻みに、首を横に振る。
「よかった・・・。それでさ、物は相談なんだけど、僕と、自由行動一緒に行かないかい?いや、もちろん嫌ならいいんだけどね。」
黒澤はしばらく明後日の方向を見つめているようにも見えたが、やがて小さな声で返事をした。
「・・・いいよ。」
「え?」
あまりにも声が小さすぎて、廉には聞き取れなかった。
「一緒に・・・行こ。」
「ありがとう!実を言うとさ、まだ誰も行動相手見つけてなかったんだ。君がいてよかった。」
穏やかな表情で廉が返した。黒澤もかすかに表情をやわらげ、しかしぎこちない表情で、何も言わずに去っていった。
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