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「おめでとう。」
突然投げ掛けられた祝いの言葉にただただ呆然としている志貴。
そんな志貴へと爽やかに笑い掛け、距離を縮めていく楓に気持ちが悪いと思ったのはいうまでもなく。
「そっか、志貴が茜をね…」
ひとり納得している様子にいまいち理解に苦しむ志貴は、ただ黙って楓を睨みつけていた。
「ちゃんとわかってると思うけどさ、茜って可愛い名前してるけどれっきとした男の子だから。」
「目の前に写真あるんだから言われなくてもわかってる。」
何度見ても少し拗ねて写る茜の姿が可愛いのか、志貴の表情は先程から緩みっぱなしな様子。
楓には気付かれないようにと、口元に手をあて隠してはいるが、志貴の纏う甘い雰囲気は楓にしっかり漏れていたりする。
「気持ち悪っ。」
「愛しの、愛しの茜ちゃんに会わせてよ。」
楓の毒づきさえも一切気にしておらず、まだ写真だけでしか見たことのない茜にすっかり夢中なっている。
思わぬ誤算で楓の目論みが外れていくことにより、どうしようもないくらい気分を落ち込んでいくが、友人の頼みとなっては致し方ない。
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