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「おまえは、呼び方がいちいち変わる。」 言われてみると、と思い返してみればつい先程も『杏崎』と呼んでいた。 要するに、固定されない呼び方がお気に召さないらしい。 「やっぱ杏崎先生を貫くべき?」 「俺は呼んでほしいなんて一度も言ってない。」 それはごもっとも。 夕暮れになる空を見上げ、考え込んだ茜は何かをひらめき杏崎へと視線を向けた。 「じゃあ、要汰にする。」 下の名前で呼ばれるなど近しい人にしかない杏崎はふっと顔を緩めて頷いた。 「決まりな。」 軽く肩を叩いた茜は満足そうに笑いかけ、仲睦まじく歩きだす。 今度は訂正する必要などどこにもない。 「藤倉のことは茜ちゃんって呼んだほうがいいか?」 どこかで呼ばれたことのある感じがするのは気のせいだろうか。 これは絶対に、 「嫌味だ!」
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