52人が本棚に入れています
本棚に追加
「茜ちゃん、捕まえた。」
ギギギッと音がなるのではないのかと言うほどゆっくりと振り向くと、そこには黒い炎が燃え上がっているように見える志貴の姿。
「ちょっと行こうか。」
嫌です。
とは口が裂けても言えない。
掴まれた腕は強くて振りほどくのは困難に等しい。
この曲がり角で楓さえいなければ…。
楓はというと、どこで出会ったのか学年の違うリボンをした女の子に怪我がないかと尋ねている様子。
幸い怪我はなかったようだが、納得いくわけがない。
けれど、自分の否は素直に認めた茜は、女の子に謝罪とともに優しく頭を撫でた。
それを不機嫌そうに見つめ腕を引く志貴につれていかれる。
他人事と見届けている楓をすれ違いざまに茜は耳元に口唇を寄せた。
「楓。明日の朝日を拝めるといいな。」
低く囁かれた言葉に楓が身震いして振り向くと、恨めしそうに睨み付ける茜が屋上へと続く階段を昇っていった。
そして、
屋上についてすぐ、施錠され正座。
いまに至る。
最初のコメントを投稿しよう!