響かせて空音

３

言い掛けてた言葉を飲み込んで
ふと、思う。

どうして志貴ごときに弁解などしなくてはいけないのか…。
どうも納得のいかない状態のなか、それでも言葉を紡ぐ茜は志貴の背後に見えるどす黒い空気にいつ飲み込まれるのか不安で仕方がない。

「茜がそんなに杏崎と仲良くなりたいと思ってたなんて知らなかった。知らないことなんてないと思ってたのに。」

「何でおまえに言う必要があるんだよ。」

そんなことよりも、志貴の最後の言葉のほうがよほど気になる。
知らないことないってなんだ？
それは…どういう意味だ。
と、問い正したいけど聞けない。

「茜はさ、杏崎と仲良くする前に、俺ともっと仲良くする必要があるんじゃないか。」

「充分過ぎるほど仲良くしてやってるだろ。」

寄るな触るなを貫き通していた茜にとって、志貴とこうしてふたりでいることが当たり前となりつつある現状に戸惑いを隠せない。
それでも受け入れてしまうのは、志貴の気さくな性格と面倒見の良さからついつい寄り掛かりたくなるときもある。
と、いうのが本当のところで…。

「仲良くっていうのは深い仲だってば。」