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ずいぶん視界が悪くなってきたな。
蛇骨は瞳をくるくる廻らせて四方を見渡し、口の端に笑みをのぼらせた。
白兵戦ならではの血煙が、むせ返るほどの生々しい臭いをもたらしている。
こたびの戦では、先陣を領国の歩兵に取られ、七人隊は出鼻を挫かれていた。
蛇骨は陣から離れ、木立の茂みの中で戦況を窺っている。
煉骨の指示だった。
敵方の透破(すっぱ)に知られぬよう、気配を消すのは容易ではない。
蛇骨はそもそも透破ではないからだ。
これは戦における並外れた敏捷さと集中力を買われ、そして或る事情を含んでの配置だった。
(煉骨の兄貴、まだかよ…)
斬りこむ合図である爆雷筒の砲撃を今か今かと待って、足がじりじりしている。
ことの起こりは、四半刻前に遡る。
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