壱.

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  「じょうっだんじゃねーよ!!」   「蛇骨!声が高すぎる!」 「だって煉骨の兄貴っ」 「やっぱ蛇骨、そう言うと思ったぜ。おれも思ったからなぁ」 「だったらっ」   蛮骨がぐっ、と蛇骨の細い腰を引き寄せた。 「ここまで来て為遂げねぇわけにいかねぇだろ。珍しく前金も頂いちまったし」 腹に響く低音が尚更、低く凄む。   「その前金、誰かさんは小間物に変えちまいやがったしな」 耳元で囁かれ、蛇骨は観念してうなだれた。   本陣の軍議の末席で蛮骨と煉骨が聞いた話によれば、七人隊はあくまでも言葉通りの助太刀であり、傭兵として華々しい功績は期待しない、というのであった。   歴戦の成果を看板にいささかの自負を抱いていた蛮骨にすれば、歯噛みしたい戦法だった。 つまりは前金とは名ばかりの、そこそこの働きに留めさせ、見合った報酬で済まさせるための餌だったのだ。   そして、その餌は蛇骨の新調した簪と紅、塗香に姿を変えてしまっていた。
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