弐.

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  (きたっ!)   蛇骨は茂みから勇んで飛び出すなり、白刃を閃かせた。   突然の砲撃に慌て、撃手はどこか、と四方を窺っていた兵達から次々に驚愕の怒号と絶叫が上がった。 目の前で戦っていた相手が、一瞬にして肉片と化したのだ。   それはまるで、かまいたちか何か、およそ妖かしの仕業と映ったに違いない。 なにしろ、風が鋭く唸るたび、あちこちで人がばらけて物言わぬ姿に変わり果てるのである。 兵達は得体の知れぬ恐怖に戦意を無くし、我先に逃げ出した。 だが、既に敵味方入り乱れた堀の中で、退路を見つけるには視界が悪すぎた。   蛇骨はなおも悠然と連刃を繰り出していく。 狩りを愉しむかのように逃げ惑う背を襲っては、一体、また一体と地に肢体を撒いていった。   これがたった一人の太刀で為されようとは。 それも、人ひとりがようやくに潜めるだけの茂みから、凶刃が襲ってきたなどとは敵味方の誰も夢にも思わなかっただろう。   もし、蛇骨の姿を見つけ、この蛇骨刀を奮うさまを目にすることが出来た者がいたならば。   それは、凄まじい惨劇でありながら、まるで紅い散華の散り降る中、剣舞を舞う舞手かと見惚れたことだろう。   陶然と頬を紅潮させ、笑みを浮かべるその幼な顔は、恐ろしくも妖艶ですらあった。   (いいねぇ… もっと…もっと逃げな!!)   蛇骨はきゅっと口角を上げた。 体中の血が沸騰しそう。 みんな、このひと太刀で、あんなに必死なんだ。猛者揃いのこいつらがみんな。   蛇骨はさらにうっとりと、蛇骨刀を奮った。   と、そのとき。 左の肩口に激しい衝撃が走った。
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