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気付いたら走っていた。
空はどこまでも青く澄み渡っている。
地面は花で埋め尽くされていて、目の前には蝶なんかがヒラヒラと飛んでいたりする。
俺は意味も無く目の前の蝶を追っていた。
しかし速い。
こっちは全力で走っているというのに全く追いつけない。
っていうか……。
いい年こいて花畑のど真ん中で蝶を追っているって……。
しかも全速力で……。
少々……いや、かなり…アレだよな……。
………………。
やべ、なんか涙が出てきそう…。
………………。 ――いや挫けるな、俺!
俺は蝶をつかまえるんだっ…! 俺は必死に蝶に両手を伸ばした。
ていっ! ていっ!
簡単に、且つ優雅に俺の手をかわす蝶。
と、ここで不思議に思う。
いつから走っているのか、よく思い出せないが、俺はかなりの時間を走っているはずだ。
なのにまったく息が切れない。
なぜだろう、と思ってきたところで何か声が聞こえてくる。 「お…、…川っ! …………………絵…っ!」
その声を聞いた途端に俺の頭から疑問が吹っ飛ぶ。
くっ、何者かは知らないが俺が蝶を捕まえるのを邪魔する気だなっ!
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