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私達は歩きながら、尽きる事の無いかのように話し続ける。
それは……一つの幸せのカタチ……。
ねえ……きっと――
「きっと……そうですよね、功成君……」
「え? 何、礼?」
「フフッ、何でもありませんよ」
そう、これはきっと幸せ。
きっと、いつまでもいつまでも続いていく幸せ。
だって‘今’こうして幸せだから……。
声を隣で聞いてられるから……。
功成君――
今、キミの声がきこえる。
‡
その後の事をほんの少しだけ話そう。
健一は大学受験を合格し、礼と同じ大学生になった。
莉央は父親の経営するデパート関連の会社に就職。
社長の娘という贔屓目を無くしても、将来の有望株だという。
凛の経営する涼風には、店員が一人増える事になる。
その店員こそ凛の待ち人で、二人で始めた涼風はより一層の盛況振りを見せたという。
そして、功成と礼が高校を卒業した七年後――
ある一冊の本が世に出る事になる。
‘キミの声’というその本は、ベストセラーとまではいかないが、様々な場所で注目を浴びた。
著者はもちろん――
絵川功成と、絵川礼であった。
おわり
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