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トン トン
そこで俺の机を小突く音が聞こえた。
音の方向を見れば俺の悪友、田中健一が親指を立てて俺に任せろといった顔をしている。
お前に頼るのは癪だが、今はそんな事を言ってられねぇ、力を貸してくれ!
そう目で訴えると、健一は頷き、目にも止まらぬ速度で紙に何かを書いて俺にバッと見せてきた。
そこに書いてあったのは――
――すいません、先生の筋肉を想っていたら眠れませんでした。良かったら触らせてくれませんか?
ドズッ!
「ぎゃああああああああああああああああ」
健一は目を押さえて床を転がった。
まぁ俺がチョキを目にくれてやった事が原因だと言わないでもない。
「絵川! 早く答えろ!」
先生も健一の事はスルーのようだ。
しかし、困った。
この問題(?)にどう答えたらいいものか……。
俺が真剣に考えていると、先生はおもむろにため息をついた。
そしてやけに優しげな目で、
「絵川……先生も鬼じゃないんだ。正直に答えたら許そうじゃないか」
と言ってきた。
そうだよ……正直に言えば、いいんじゃないか。
別に俺にはやましい事なんてこれっぽっちも無いんだから。
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