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「このヤロー! よくも避けやがったな!」
村の子供の一人が、俺が避けたことに腹を立てながら、こっちに向かってきた。
「あ、おい! アイツに近付くと死んじゃうぞ!」
「そうだよ! 近付いちゃだめだよ!」
「離せよ! 俺はあいつに一発ぶち込んでやらないと気が済まないんだよ! 俺の父さんを殺しやがって! 父さんを返せ!」
俺は他の子供達が、暴れている子供を取り押さえているのを無視して、山頂へ続く道を突き進んだ。
山頂に着くと、奥には綺麗に研ぎ澄まされた、何色にも染まることのない透明の液体が、湖となって現れていた。
俺は予め持っていたポリタンクのフタを開け、その中に生命の恵みをいっぱいに入れる。
「……ふぅ」
ポリタンク容器にいっぱい入れると、その場に力が抜けたようにへたりこんだ。
「……俺だって、好きで人を殺してるんじゃないんだ」
自分の手が酷く汚れているような気がして、その手を見ながらそう呟いた。
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