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空は、澄んだ青に染まっていた。
前までこの北国特有の体を震わせるほどの寒風だったのに、今ではすっかり暖かくて心地よい風が頬を優しくなでた。
その風に満開に咲き誇っていた桜の花びらが、さらわれて舞い上がる。
今、季節は春である。
風にさらわれたピンクの花びらがひらひらと空を舞う。
そんな様子を、俺は桜の木の下でぼんやりと眺めていた。
身を包むのは、先月まで着ていた黒くてダサい学ランではなく。
新品特有の真新しい匂いがするちょっとおしゃれなブレザー。
瞳に映っていた桜の花びらが下へと落ちてきた。
体がまるで自分のではないように、無意識的に右手が出た。
暫くして、花びらは俺の掌に無事着地を遂げた。
その花びらを黙って見つめていた。
そして、ギュッと拳を握り。
そして呟いた。
「………大丈夫、」
だって。
世界を回してるのは……
━━━だから。
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