灰春

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今日も地味で無事に終わった。 さて、帰って借りてきた映画のDVDでも見るかな。 放課後の掃除を終わらせた俺は、教室の外に置かれていた大量の鞄から自分のリュックを探し出し肩に掛けた。 ずしりと重い感触が肩越しに感じると、足を一階に繋がる階段へと向かせた。 「佐藤ー!」 そんな時、背中から自分を呼ぶ誰かの声が聞こえた。 振り向くとそこには、反対側から走ってきたのか。 息を弾ませた同じクラスの上條がいた。 俺は体ごとくるりと上條へと向かせる。 「何?」 「ハァ…ハァ…良かったぁー!お前まだ帰ってなくてー!」 心底安心したというような顔をしながら、上條は手を少し屈ませた膝へと着いた。 肩が大きく上下する。 相当走ってきたんだろう。 だけど、上條がこんなに走ってくるほどの用ってなんだろう。 困惑気味に眉を潜ませると、上條は急に目を見開きがしっと俺の肩を掴んだ。 突然のことに体がビクッと収縮する。 見開かれて自分を見る上條の目は、かなりの力を持っていて何故か怖く感じた。 「え、え!?な、何!?」 「なぁ~佐藤~。お前ってさ、1年の頃に学級代表やってたよな?」 「え……あ、あぁ、そうだけど」 確か、あの時。 誰もやる人がいなくて、仕方なく推薦って形になったんだっけ。 そんで何でか俺が推薦されて…仕方なしになったんだっけ。 学級代表なんて派手な仕事…やりたくなかったけど友達の推薦とあの空気。 抵抗として曖昧な態度を取っていたが、困った顔をした担任からの言葉が極めつけだった。 『佐藤…頼めないか?』 徹底的な地味さを追求する俺だが、性格は極度なまでの優柔不断を持っている。 そして押しに弱い。 そんな性格が災いしてか、学級代表になってしまったのだ。 まぁ、極力地味さを心掛けていたから目立たなかったものの。 出来ればもうあんな役職は御免だ。 だけど…なんで上條がこんな事言うんだろ?
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